インボイスの公共交通機関特例とは?

令和5年10月1日よりインボイス制度が始まりました。今回は、いわゆる「公共交通機関特例」について取り上げてみたいと思います。

公共交通機関とは?

公共交通機関と聞いて、何をイメージするでしょうか?

公共交通機関を直接定義した法律はありませんが、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律では、鉄道事業法による鉄道事業者、軌道法による軌道経営者、道路運送法による一般乗合旅客自動車運送事業者・一般貸切旅客自動車運送事業者・一般乗用旅客自動車運送事業者、自動車ターミナル法によるバスターミナル事業を営む者、海上運送法による一般旅客定期航路事業を営む者・旅客不定期航路事業者、航空法による本邦航空運送事業者等を「公共交通事業者等」と定義しています。

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
(定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 五 公共交通事業者等 次に掲げる者をいう。
  イ 鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)による鉄道事業者(旅客の運送を行うもの及び旅客の運送を行う鉄道事業者に鉄道施設を譲渡し、又は使用させるものに限る。)
  ロ 軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道経営者(旅客の運送を行うものに限る。第二十六号ハにおいて同じ。)
  ハ 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による一般乗合旅客自動車運送事業者(路線を定めて定期に運行する自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る。以下この条において同じ。)、一般貸切旅客自動車運送事業者及び一般乗用旅客自動車運送事業者
  ニ 自動車ターミナル法(昭和三十四年法律第百三十六号)によるバスターミナル事業を営む者
  ホ 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)による一般旅客定期航路事業(日本の国籍を有する者及び日本の法令により設立された法人その他の団体以外の者が営む同法による対外旅客定期航路事業を除く。次号ニにおいて同じ。)を営む者及び旅客不定期航路事業者
  ヘ 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)による本邦航空運送事業者(旅客の運送を行うものに限る。)
  ト イからヘまでに掲げる者以外の者で次号イ、ニ又はホに掲げる旅客施設を設置し、又は管理するもの

すなわち、鉄道、路面電車(軌道)、路線バス(一般乗合旅客自動車運送)、貸切バス(一般貸切旅客自動車運送)、タクシー(一般乗用旅客自動車運送)、旅客船、飛行機を公共交通機関と考えてよさそうです。

※「公共交通事業者等」が行う運送機関だから公共交通機関、・・・でよさそう?

なお、一般社団法人日本民営鉄道協会のウェブサイトには、『鉄道や軌道(路面電車)、バス、タクシー、航空機、船舶など、不特定多数の人々が、所定の運賃を支払えば自由に利用することができる交通機関のことを公共交通機関といいます。』と掲載されていますので、一般的にはこの解釈で間違いなさそうです。

いわゆる「公共交通機関特例」とは?

3万円未満の旅客の運送について売手のインボイス交付義務が免除されるので、買手もインボイスの保存は不要、とされているものが公共交通機関特例です。根拠条文を確認してみます。まずは消費税法第57条の4第1項のただし書き部分です。

消費税法
(適格請求書発行事業者の義務)
第五十七条の四 適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行つた場合(第四条第五項の規定により資産の譲渡とみなされる場合、第十七条第一項又は第二項本文の規定により資産の譲渡等を行つたものとされる場合その他政令で定める場合を除く。)において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条において同じ。)から次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下第五十七条の六までにおいて「適格請求書」という。)の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。ただし、当該適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、この限りでない。

消費税法第57条の4第1項のただし書きにいう「政令で定める」とは、消費税法施行令第70条の9第2項となります。すなわち、税込価額が3万円未満で、かつ、海上運送法に規定する旅客船、道路運送法に規定する路線バス、鉄道事業法に規定する鉄道、軌道法に規定する路線バスの旅客運送代、とされています。

つまり、公共交通機関特例と呼ばれながらも、一般的に公共交通機関と認識されている貸切バス、タクシー、飛行機については適用されないのです。

消費税法施行令
(適格請求書の交付を免除する課税資産の譲渡等の範囲等)
第七十条の九 
2 法第五十七条の四第一項ただし書に規定する政令で定める課税資産の譲渡等は、次に掲げる課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項、第七十条の十二及び第七十条の十四第五項において同じ。)とする。
 一 次に掲げる役務の提供のうち当該役務の提供に係る税込価額(法第五十七条の四第一項第四号に規定する税込価額をいう。)が三万円未満のもの
  イ 海上運送法第二条第五項(定義)に規定する一般旅客定期航路事業、同法第十九条の六の二(運賃及び料金等の公示)に規定する人の運送をする貨物定期航路事業及び同法第二十条第二項(不定期航路事業の届出)に規定する人の運送をする不定期航路事業(乗合旅客の運送をするものに限る。)として行う旅客の運送
  ロ 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第三条第一号イ(種類)に規定する一般乗合旅客自動車運送事業として行う旅客の運送
  ハ 鉄道事業法第二条第二項(定義)に規定する第一種鉄道事業又は同条第三項に規定する第二種鉄道事業として行う旅客の運送
  ニ 軌道法第三条(事業の特許)に規定する運輸事業として行う旅客の運送
 二 ~以下省略~

【結論】タクシー、飛行機等は3万円未満でもインボイス必要

公共交通機関特例という名称が先走っていることもあり、「タクシー、飛行機は公共交通機関だからインボイスなくてもOK」と誤った判断をしないように注意してください。

 
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