印紙税の取り扱いは難しい

印紙貼付の要否判断の根拠は?

日常の経済取引に伴って作成する契約書や領収書等には、印紙税法によって印紙税が課されることになっていますが、実務においては、印紙の貼付が必要なのか否か、また、いくら分の印紙が必要なのか、判断が難しい場面に遭遇することが多々あります。

印紙税が課税される文書は、印紙税法別表第1の課税物件表において20種類が定義されているため、どこに該当するのかを判断していくことになるのですが、今回はその中でも、第7号文書、すなわち継続的取引の基本となる契約書について整理します。

継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)は限定列挙

印紙税法別表第1の課税物件表には、第7号文書は次の通り定義されています。

印紙税法 別表第一 課税物件表(抜粋)

番号物件名        定義         課税標準及び税率   非課税物件      
継続的取引の基本となる契約書(契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が三月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)1 継続的取引の基本となる契約書とは、特約店契約書、代理店契約書、銀行取引約定書その他の契約書で、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるものをいう。一通につき
四千円

前提として、継続的取引の基本となる契約書は、括弧書きに除外規定が設けられているため、次の条件をいずれも満たすものは、(内容的に、継続的取引の基本となる契約書であったとしても)第7号文書には該当しないことになります。
・契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が三月以内
・更新に関する定めのないもの

次に課税物件表の定義欄をみると、継続的取引の基本となる契約書とは、(中略)、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるものをいう、とされています。すなわち、印紙税法施行令第26条で次のように規定されています。

印紙税法施行令
(継続的取引の基本となる契約書の範囲)
第二十六条 法別表第一第七号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。
一 特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第一第十七号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)
二 代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理若しくは媒介の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの
三 銀行取引約定書その他名称のいかんを問わず、金融機関から信用の供与を受ける者と当該金融機関との間において、貸付け(手形割引及び当座貸越しを含む。)、支払承諾、外国為替その他の取引によつて生ずる当該金融機関に対する一切の債務の履行について包括的に履行方法その他の基本的事項を定める契約書
四 信用取引口座設定約諾書その他名称のいかんを問わず、金融商品取引法第二条第九項(定義)に規定する金融商品取引業者又は商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第二十三項(定義)に規定する商品先物取引業者とこれらの顧客との間において、有価証券又は商品の売買に関する二以上の取引(有価証券の売買にあつては信用取引又は発行日決済取引に限り、商品の売買にあつては商品市場における取引(商品清算取引を除く。)に限る。)を継続して委託するため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち受渡しその他の決済方法、対価の支払方法又は債務不履行の場合の損害賠償の方法を定めるもの
五 保険特約書その他名称のいかんを問わず、損害保険会社と保険契約者との間において、二以上の保険契約を継続して行うため作成される契約書で、これらの保険契約に共通して適用される保険要件のうち保険の目的の種類、保険金額又は保険料率を定めるもの

印紙税法施行令第26条において、「印紙税法別表第1第7号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする」と規定されていることから、ここに掲げられていない文書は第7号文書には該当しない、ということになりますね。

該当する取引はイメージ程多くない?

それでは順に確認していきます。なお、印紙税の鉄則で、文書の名称・呼称・形式的な文言によるのではなく、実質的な意義に基づいて判断されるのは当然のことですので注意しましょう。

一 売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書

営業者との間におけるもので、共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの、が該当します。なお、括弧書きにて電気又はガスの供給に関するものを除く、とされています。

ポイントは、売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負に関する契約、ということです。これら以外の取引にはこの項目は該当しませんので、例えば委任に関する契約は第7号文書には該当しないことになります。

二 売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理若しくは媒介の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書

委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの、が該当します。

三 貸付け(手形割引及び当座貸越しを含む。)、支払承諾、外国為替その他の取引によつて生ずる一切の債務の履行について包括的に履行方法その他の基本的事項を定める契約書

金融機関からの信用の供与を受ける者と当該金融機関との間におけるもの、が該当します。

四 有価証券又は商品の売買に関する二以上の取引(有価証券の売買にあつては信用取引又は発行日決済取引に限り、商品の売買にあつては商品市場における取引(商品清算取引を除く。)に限る。)を継続して委託するため作成される契約書

金融商品取引業者(商品先物取引業者)と顧客との間におけるもので、共通して適用される取引条件のうち受渡しその他の決済方法、対価の支払方法又は債務不履行の場合の損害賠償の方法を定めるもの、が該当します。

五 二以上の保険契約を継続して行うため作成される契約書

損害保険会社と保険契約者との間におけるもので、共通して適用される保険要件のうち保険の目的の種類、保険金額又は保険料率を定めるもの、が該当します。

まとめ

二~五は金融機関等との契約書ということで印紙が必要か否かで悩む場面は考えにくいため、中小企業が注意しなければならない場面が多いのは一ではないでしょうか。

ただし、一について「売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負」とあるように、対象となる契約書は限定的です。「継続取引」という単語に引きずられるのではなく、法令に規定された要件に該当するのか否かを確認して判断し、無駄な印紙を納めることのないようにしたいものですね。

 
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